頸椎椎間板ヘルニア(けいついついかんばんヘルニア)
首の骨と骨の間には、椎間板といわれるクッションのようなものが存在します。椎間板は、中心に髄核(ずいかく)と呼ばれるゲル状の物質、それを囲むように繊維輪(せんいりん)と呼ばれる丈夫な組織で構成されています。
加齢や運動がきっかけで繊維輪に亀裂が入り、内部の髄核が飛び出し、神経とぶつかることで痛みが生じる病気です。腰椎椎間板ヘルニアと基本的な病態は同じですが、頚椎はルシュカ関節といわれる関節によって、しっかり支えられており、椎間板に圧がかかりにくい構造になっているため、発症年齢は腰椎椎間板ヘルニアと比べると高くなっています。しかし、首は腰に比べると神経との距離が近いため、少し椎間板が飛び出しただけでも症状が強く出てしまうことがあります。
診断には、問診や診察・腰椎X線を撮影し、原因となっている部分を特定していきます。さらに細かく、正確に診断するためには、脊柱管の中を撮影することのできるMRIが有用です。腰椎椎間板ヘルニアと同様、どの部分で椎間板ヘルニアが起こっているかによって症状は異なります。例えば第4/5頚椎でヘルニアが起こった場合、首から肩のあたりを中心に、第5/6頸椎でヘルニアが起こった場合首から親指のあたりまで痛みや痺れが生じます。
症状
首・肩から手にかけてのビリビリした痛み・しびれ。
肩甲部の痛み、こり。
治療
基本的にすぐに手術ということはありません。まずは、神経ブロックと薬物療法などの保存療法をおこないます。保存療法で改善が見られなかったり、筋力低下が著しかったり、非常に強い痛みが生じている場合、手術を検討します。薬物療法は、プレガバリン・デュロキセチンといった神経痛の薬やロキソプロフェン・アセトアミノフェンなどの鎮痛薬を内服していただきます。漢方薬やその他の薬も効果が期待できることもあるため経過を見ながら判断していきます。
神経ブロック療法は、症状の原因となっている神経をX線・MRIなどで特定し、神経ブロックをおこないます。神経が圧迫され、炎症を起こしている部分に直接、薬を投与できるため非常に効果的な治療方法です。頸椎の神経根ブロックは、これまではX線を使用しておこなうことが主でした。しかし、現在は放射線の被爆なく超音波でおこなうこともできるようになり、より患者さんに負担がかからないようになっています。
主に使用する神経ブロックは「硬膜外ブロック」「神経根ブロック」等があります。