四十肩・五十肩
五十肩とは、中高年で発症する肩の痛みと可動域制限(動かしにくくなる)を呈する病気です。40-60歳代が好発年齢です。極めてありふれた疾患で、有病率は1-5%とされています。
関節を形作る靱帯や腱、関節包、滑液包などの軽微な損傷をきっかけに炎症が生じることが原因であるとされています。最終的には肩関節包に炎症が生じ、その結果、関節包の肥厚と短縮が生じて可動域制限が生じます。
病期は3つに分類されます。
- 炎症期(0-6ヶ月):痛みが強い時期。動かしたときの痛みや夜の痛みが強い
- 拘縮期(3-12ヶ月):痛みは徐々に良くなるが、腕が上がらない、後ろに回らないなどの症状が出てくる
- 緩解期(6-18ヶ月):少しずつ腕が上がるようになってくる時期
これら病期は実際には重なっており、特に炎症期と拘縮期は併存するケースがしばしばあります。
診断には超音波検査が有用です。他の疾患(腱板断裂、石灰性腱炎など)を除外して、さらに腱板疎部の炎症などが確認できれば正確に診断できます。
症状
肩の痛み:腕を前から挙げたり横から挙げたりするときに痛みが出ます。車のシートベルトを締めるときや、荷物をとろうと腕を伸ばしたりするときに痛みます。
また夜寝ているときに痛みで目が覚めたり、痛い方を下にして寝ることができなくなります。
動かしにくさ:腕を前から挙げたり横から挙げたりする動きができなくなります。重症になるとそれぞれ90°も挙がらなくなります。後ろに腕が回りにくくなりエプロンを着けたりすることができなくなります。
治療
発症早期には鎮痛薬、関節内注射と安静で痛みをとり、拘縮がメインの時期には理学療法、運動療法が治療の中心となります。しかし実際には関節包の拘縮があると関節内注射をしても痛みがなかなかとれず、リハビリをしても痛くてリハビリが進まないケースがしばしばあり、医療現場は困っていました。当院ではサイレントマニピュレーションという治療を考案し、これまでに4000人以上の患者さんにおこなってきました。これは麻酔をかけて痛みがない状態にして、硬くなった関節包を広げるという方法です。
サイレントマニピュレーションは外来で行える五十肩の治療法としては極めて優れた除痛効果と可動域改善効果を併せ持っています。