腰からお尻、足にかけての痛み(しびれ)
若年の方から高齢の方まで多くの患者さんが来院される症状の1つです。日常的に少し苦痛に感じるレベルから、動けなくなるほどの腰痛・坐骨神経痛など、誰しもが1度は経験をしたことがあると思います。軽度の腰痛ならば市販の薬などで様子を見ても構わないと思います。しかし、足にまでくるような痛み・しびれ、日常生活に支障をきたしている痛みは、悪化する前の原因検索と治療が大切です。
急性腰痛(ぎっくり腰)
ぎっくり腰という名で知られています。重いものを持ち上げたり、朝おきあがった時などに急にくる腰痛です。原因は、骨・筋肉・椎間板の変形など様々です。少し前までは、多くのぎっくり腰が原因不明とされていましたが、最近では、超音波・神経ブロックの技術の進歩と共に原因が明らかになることも増えてきました。
- 急に起こる腰の痛み
- 消炎鎮痛薬や湿布などを使用し痛みを和らげます。それだけでは痛みが取れないことが多く、「原因を明らかにする」「素早く痛みをとる」目的に神経ブロックも頻繁に使用されます。
腰椎椎間板ヘルニア
腰の骨と骨の間には椎間板というクッションが存在します。椎間板は線維輪という軟骨の殻とその中身の髄核でできています。クッションカバーが線維輪、中のクッション材が髄核というイメージです。重いものをもったり・スポーツ等をきっかけに髄核が線維輪を突き破って後ろに飛び出ます。
外に飛び出た椎間板が、後ろにある神経とぶつかることで痛みが生じる病気です。
- 腰痛・腰から足にかけての痛みや痺れ
- 神経の痛みを改善させる薬を内服していただいたり、神経と椎間板がぶつかっているところにブロック注射をおこない炎症を和らげます。椎間板は炎症がおさまると元の位置に戻っていくため早期の回復が見込めます。
腰部脊柱管狭窄症
ヒトの背骨の中には、脊柱管という空間がありその中を脊髄が頭からお尻まで通っています。その脊柱管が、靭帯や椎間板・骨などが変形したりすることによって、圧迫され痛みや痺れが生じる病気です。中高年に多く、前かがみになると楽になることが多いのが特徴の1つです。
- 腰から足にかけての痛みとしびれ、長期間を歩けずすぐに休んでしまう(間欠性跛行)、足に力が入りにくくなる
- 神経痛の薬を内服していただいたり、症状の原因となっている神経をX線・MRIなどで特定し、神経ブロックをおこないます。
腰椎すべり症
ヒトの背骨の中には、脊柱管という空間がありその中を脊髄が頭からお尻まで通って腰の背骨である腰椎は5つの骨から構成されていますが、それらは連続性があり曲線を描いていますが、そのうち骨が前か後ろにずれてしまう病気です(図)。
骨がずれてしまうと、その後ろにある神経を圧迫し神経痛や腰痛が生じます。クッションのような椎間板に圧迫されるのではなく、硬い骨によって圧迫をうけているので、治療の効果がでにくいこともあります。
- 腰痛・腰から足にかけての痛み・しびれ
- リハビリや日常生活の指導に加えて、神経ブロックと内服療法をおこなうことで痛みを長期的に痛みを取り除いていきます。
腰椎椎間関節症
腰の背骨と背骨の間には、膝や肘のように「椎間関節」という関節があります(図)。加齢や重労働などにより、背骨が変形すると骨同士がぶつかり合い、関節が炎症を起こし痛みが生じる病気です。体を前後や左右・回旋させたりすると痛みが生じるのも特徴の1つです。
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- 鎮痛薬・湿布の内服をしていただきます。さらに、X線・MRIで悪い場所を特定し、超音波を使用して原因の椎間関節にブロック注射をおこなうことで劇的に痛みをとることができます。再発を繰り返す場合には脊髄神経後枝内側枝熱凝固を行います。
仙腸関節症
骨盤を構成している、仙骨・腸骨の骨の間にある、隙間を仙腸関節と呼びます。この隙間は周りの靭帯によって固定されていますが、ここのバランスが崩れることで炎症が起き痛みが生じる病気です。
中腰の動作が多い方や妊婦さんにも多いと言われています。痛みの部位が、患者さん自身がピンポイントに見つけることができるのも特徴の1つです。
- お尻の痛み お尻から太ももにかけての痛み。
- この病気を疑った場合、超音波を使用して、仙腸関節にブロック注射をおこないます。痛みの原因に直接、抗炎症薬を注入できるため非常に効果的です。